水野善郎
はじめに
いまアメリカのマリンアクアリストの中で、生物的ろ材をフィルターから抜いてしまうヤンクトリック(yank trick)が流行している。高品質ライブロック(サンゴ礁からの岩)が十分にあり、高能率のプロテインスキマーを併用すれば、無脊椎動物水槽でろ過槽が必要ないというのである。
リー・チン・エン氏が提唱した「ナチュラルシステム」から派生するベルリン方式は、筆者の情報源、ライブロックを使用した現在の無脊椎動物飼育一般論からかけ離れた話だが、ものは試しと実践してみた。本文でナチュラルシステムの沿革を踏まえ、ベルリン方式を紹介する。
ナチュラルシステムの沿革
シンガポールのリー・チン・エン氏が『ネーチャーズシステム』と名付けた海水魚飼育方式を発表し、話題になったのは1961年、今から30年以上前のことである。熱帯の強い直射日光の下で海岸の岩(ライブロック)を入れた海水水槽に強力なエアレーション(大きな泡で)を行った。それだけで海水魚が飼育できるというのが、元祖「ナチュラルシステム」であった。
1961年当時のアメリカの雑誌『Tropical Fish Hobbyist』に掲載されたリー・チン・エン氏の記事を読んでも詳しいことはあまり書かれていない。Fishnetで知り合ったインドネシアの留学生も、リー・チン・エン氏が詳細を外にあまり出さなかったことをぼやいていた。情報不足で、ナチュラルシステムは再現が難しく、一般には普及させず、伝説で終わってしまったようだ。しかしこのナチュラルシステムの考え方が、以後、ライブロックを使用した各方式の出発点になったことは紛れのない事実である。
Delbeek/Sprungは、この強力なエアレーションが結果的にはプロテインスキマーとして働き(泡に着いたゴミが水槽の空気/水面境界に付着する)、かつ、シンガポールの強い直射日光が現在のHID光源の代わりをしたのであろうと想像している。確かに筆者の水槽でも、空気/水面境界でシッタカが付着物を好んで摂取するのが見られる。
モナコ方式
リー・チン・エン氏の後に現われた、モナコ方式と呼ばれるJean Jaubert氏のナチュラルシステムは有名である。この方式はモナコ水族館で実践されているが、ここの展示の美しさは定評がある。ライブロックを使用し、強い光を必要とするのには変わりがないが、水槽の一部を切り分けて貧酸素領域を作り、そこで反硝化反応を嫌気菌で行わせるのが特徴である。
貧酸素領域と一般領域の隔壁にはスクリーン+珊瑚砂などが使用され「拡散」でイオン交換が行われる。貧酸素領域は暗室とされ、酸素濃度は1mg/L程度が適当とされる。この領域での凪は必然的に低下し隔壁に使用されている珊瑚砂のカルシウムを含む物質を溶かし、それによってカルシウムイオン補給が行われるのだ。一石二鳥である。貧酸素領域の反硝化反応で硝酸塩濃度は低下し、水換えを何年もしなくてよいそうである。詳しくはアメリカ特許番号4995980を参照されるとよい。
Algae Scrubber方式
アメリカ、ワシントンDCのスミソニアン博物館に勤めるアデー博士のナチュラルシステムである。バイオスフィアⅡ計画などで使われた考え方で、オーストラリアのグレートバリアリーフ水族館もこの方法で運営されている。Algae Scrubberというのは、HID光源などの非常に強い光の下で海藻を育成し、その海藻を時折収穫し、窒素化合物などを水槽から除去しようという考え方である。食物連鎖の概念から自然を真似しようという努力が見受けられる。
アデー博士は海藻やプランクトンなどの食物ピラミッドの底辺にあたる生物を重要に考えており、水流や波の発生で微生物を殺してしまう可能性があるという遠心ポンプを使わず、ベローズポンプやウエーブバケットと呼ばれる脈動する波発生器を推薦している(ただしDelbeek/Sprungは遠心ポンプはプランクトンにあまり関係しないと書いている)。
しかし大容量ベローズポンプ、可動部のある特殊なウエーブバケット(軸、また軸受けはテフロンなどのプラスチック)は家庭で再現するのは難しい。特に居間の水槽でザバンザバンと波を立てたら塩害どころではない。アデー博士によると超弩級、屋外のグレートバリアリーフ水族館は一応成功しているようだが、ご覧になった方はあるだろうか?
この理想的に見えるAlgae Scrubberであるが水溶性有機物(Dissolved Organic Compound: DOC)が海藻だけでは除去できず、水が黄色っぽくなるという批判もある。グレートバリアリーフ水族館では、このためオゾン使用を始めたそうである。
ベルリン方式
ドイツ、ベルリンからPeter Wilken氏を中心に急速に広まったベルリン方式であるが、従来の方式から比べて以下のような特徴がある。
生物学的ろ過槽は不要。
物理ろ過をしない。
プロテインスキマーを積極的に使用する。
水換えは数カ月毎に10〜25%ほどする。
カルシウム添加をKalkwasserで行い石灰藻(Coralline Algae: カワライシモなどの紅藻綱カクレイト目サンゴモ科)を積極的に増やす。
草食性の生物や底砂をひっくり返す生物を上手に使う。
ライブサンドと呼ばれる底砂(2.5〜5cm)を敷くこともある。
ろ過槽不要
ベルリン方式では、生物学的ろ過槽を使わない。ライブロックの表面には大量のろ過菌が繁殖しており、ある程度の量(一見して水槽の1/3〜1/4)のライブロックがあれば、ライブロック自体で十分なろ過が行われる。不思議なようだが、実際のサンゴ礁でも岩しかないと考えると納得がいくかもしれない。
このとき、ウエット・ドライなどの従来の生物学的ろ過槽の併用は逆効果であるといわれている。生物学的ろ過槽での硝化反応が非常にすばやく行われるのでプロテインスキマーが窒素系不純物を取り除く暇がないため、硝酸塩レベルが増加するというのである。前述したが、それが「ヤンクトリック」の理由である。
物理ろ過なし
次に、ベルリン方式において、物理ろ過は必要とされない。フィルターパッドを毎日清掃するならまだしも、数日たち、デトライタスの付着したフィルターパッドはそれ自体が生物学的ろ過槽のように硝酸塩工場となってしまうからである。無脊椎動物に必要なプランクトンも物理ろ過なしのほうが増殖しやすいのであろう。物理ろ過の代わりにセディメント槽の使用が推薦されている。サンプなどでデトライタスを沈下させてサイフォンで吸い取るのである。
プロテインスキマー
他のナチュラルシステムと比較すると、プロテインスキマー使用とKalkwasserの添加がベルリン方式の特徴である。高能率のプロテインスキマーを使用することで、不純物が硝化する前に取り除くのである。その代わり、ヨウ素をはじめとする微量元素も除去されるのでそれらの物質の追加は必要である。
プロテインスキマーには原理、また構造により、大きな効率の差が存在する。これまでもエアストーンやベンチュリバルブで発泡するものが紹介されているが、これ以外にも"Disperserator"方式といって高速回転中のスパイク付ポンプブレードで水と空気を攪拌させ発泡する機種もある。効率のよいプロテインスキマーは細かい泡でコラムが全部真っ白になるのである。
オゾンの併用はプロテインスキマーの効率を向上するようだが、上手に運営されているベルリン方式のタンクではオゾン添加の必要性はほとんどない。オゾンなしで酸化還元電位(ORP)が350〜450mVに安定するのが普通のようだ。
数カ月毎の水換え
ライブロック、プロテインスキマーの併用で、ベルリン方式の水槽では水換えがほとんど必要なくなる。しかし、数カ月に一回、10〜25%水換えをするようにDelbeek/Sprungは推奨している。何年も水換えなしでOKという話もあるが、まだ海水中の微量元素添加について全てが解明されていないので、少しは換えたほうが無脊椎動物の調子がよくなるそうである。
Kalkwasser
このように何カ月も水換えをしないときに必要になるのがカルシウム、ストロンチウム、ヨウ素及び微量元素の追加である。ベルリン方式の最大の特徴であるKalkwasserは水酸化カルシウム-Ca(OH)₂(消石灰)、または酸化カルシウム(生石灰)の飽和水溶液(上澄み、石灰水)である。このアルカリ性の溶液を少しずつ添加することで、ハードコーラルや石灰質の海藻が育つわけである。
また水酸基が添加されることで、海水のアルカリ性は保持される。さらに、Kalkwasser添加で海水中の燐酸イオンが燐酸塩として沈下するといわれている。海水の自然蒸発分をKalkwasserで補充することで、普通は十分なカルシウムが保持できるが、さらにカルシウムイオン濃度測定を実行することが望ましい。
蒸発量が少ないなどの理由から、Kalkwasser添加後も、カルシウムイオン濃度が400ppm以下の場合は、塩化カルシウム溶液、またはKalkwasserの懸濁原液を点滴することで、カルシウムレベルを400〜500ppmの間に保つのが一般的である。ご存じの通り、海水カルシウムイオン濃度は普通400ppm程度である。
Kalkwasserは保存性が悪い。空気中の二酸化炭素と反応して炭酸カルシウムとなり沈下してしまうので添加直前に溶解するか、密閉した容器での保存が必要である。またKalkwasserは徐々に添加しなければいけない。数時間かけて点滴のようにたらすことが必要で、さもなくば、一挙にpHが上昇し、生物にも悪いし、炭酸カルシウムの沈下が起こり、カルシウム濃度が逆に低下してしまうこともあるそうだ(水酸化カルシウム、酸化カルシウムの取り扱いには十分注意を払い他の医薬品、化学製品と同様、子供の手の届かない所に保管されるべきである)。二酸化炭素を注入してpHの上昇に対抗する手段もあるが、しかし二酸化炭素過剰添加時のpH低下に於ける危険性が高いのであまり推奨されていない。
ストロンチウムは塩化ストロンチウム溶液として添加されるのが一般的で、市販のボトル入りの添加液(Coralifeなど)を使用するのがよいだろう。微量元素も同様である。
Coralline Algae
Coralline Algaeはカワライシモなど、紅藻綱カクレイト目サンゴモ科の石灰藻の一種であり、サンゴ礁の岩をピンクや紫、緑、茶色、白などの色で染めている犯人である。ザラザラの岩に付着して岩をいかにも塗装でもしたようにスムース、かつカラフルな色に染める(写真参照)。
美しいだけでなく、スムースなこの石灰藻には他の海藻が付着しないのでベルリン方式の水槽では非常に大事にされる。アルカリ性(pH=8.2〜8.4程度)、高カルシウム(400ppm以上)で水流の多い場所に生息する関係上、この藻が密生する環境は無脊椎動物にとっても最適なのである。
つまり、このCoralline Algaeは装飾だけでなく、環境のバロメータなのだ。筆者の水槽も2週間をすぎた頃からこのCoralline Algaeが繁殖し始め、水流の強い特にプラスチック部品(パワーヘッドなど)に付着するのが見られている。
美しいCoralline Algaeをバリバリ食うのがウニである。ライブロックには小さなウニが沢山付いてくる場合が多く、電気を消した後、少し待ってから懐中電灯を使い『ウニ狩り』をするのが必要であろう。
藻対策
Coralline Algaeが善玉であれば、反対に緑、茶などの海藻は、海水・淡水共にアクアリストの悩みであるが、ベルリン方式では大きく分けて海水貧栄養化と草食性生物活用の二つの方法で対応している。琵琶湖汚染でお馴染みの燐酸塩と、普通の砂に含まれる珪素は藻の成長に必要である。逆にいえば、この二つの物質を取り除いてしまえば、藻が生えにくくなるのである。
燐酸塩の除去は酸化アルミ(だと思う)を使用した燐酸除去材もあるが、最初から燐酸塩を加えないのが一番である。これには、人工海水や活性炭などを上手く選ぶこと、また使用する水道水を逆浸透膜、イオン交換などで前処理することなどで解決する。もちろん餌にも燐酸が含まれているので必要最低限の給餌をすることはいうまでもない。
草食性の生物としてシッタカやサザエ(?)のような貝は熱心に藻を食べるし、小さな草食性のザリガニも重宝されているようだ。イエロータンやパウダーブルータンのような魚も藻を食べることで人気がある。ウニの仲間も藻をたくさん食べるが、前述の通り、Coralline Algaeをもガリガリ食べるので嫌われる。これらの草食性の生物はなかなか働きものであり、十分な数がいれば、水槽をきれいに保ってくれる。水槽内には生えない藻がプロテインスキマーの内面に沢山生えているのを見ると草食性生物の必要性が認識できる。
ライブサンド
ここ最近、ベルリン方式の水槽でライブサンドが話題になっている。これはベアボトムの代わりに1〜2インチ(2.5〜5cm)のサンゴパウダーを敷き、微生物の種として実際のサンゴ礁の砂を添加したり、砂の攪拌のため、ナマコ、ヤドカリ、またアカハチハゼなどを使用する。
まだ完全に確立した方法ではないが、砂中の反硝化反応でベルリン方式の低い硝酸塩濃度が更に低くなるようだ。底砂攪拌用の生物を入れないとデトライタスが貯まって当然水質に問題がでるようである。このライブサンドが効果を発揮するのは水槽設営後数カ月からららしい。
水流
最後に水流の重要性を忘れてはならない。ライブロックをろ過に使用していることもあり、適当な水流が存在しないとベルリン方式の水槽は成り立たない。一説では、一時間につき水槽水量の5〜7倍を循環させることが必要とされている。水流も少し強めがよく、デトライタスの吹き溜まりを防ぐため、一方向でなく交互、またはランダムな流れが好ましいようだ。このためSurge MakerまたはWave Makerと呼ばれる、複数のパワーヘッドをランダムにON/OFFする装置が発売されている。
温度も一般的に25℃近辺がよいとされているが、28℃近辺を維持したほうがよいという説もある。そうであるが、最低200Lの水量が初心者管理上容易であるということだろう。が駄目だということではない。大きいほうがSprung氏は15ガロン(50L程度)の素晴らしい無脊椎動物水槽(mini-reef)を持っているとは容易に想像できる。しかし、小さい水槽には推奨されている。
給排水工事
給水、排水が直接水槽にあるとメンテナンスが容易である。また事故の時に溢れた海水を(床の上ではなく)直接排水できる利点がある。しかし、水道工事が高く付くのは皆さんご存じのとおりである。幸い、東京都の指定水道工事店が届け出をして施行しなければいけない直接給水ではなく、我が家は誰でも...
結果
ライブロック投入後、1カ月を越えたいま、水槽は写真のような様相、水質も透明、pH=8.40、ORP=430付近(オゾン添加なし)で安定し、アンモニア、亜硝酸塩はホビー用の測定キットでは検出されない。Kalkwasserの添加から、カルシウムは400ppm程度で安定している。この30日間全く水換え及びガラス面清掃はしておらず、蒸発分をKalkwasserで補充しただけである。
またこの間、全くアンモニア及び亜硝酸が検出されなかったのも興味深い。サイクルせずにサイクルしたらしい。CompuServeのfishnetで経験者に聞くと、普通はライブロック上の腐敗物から多少のアンモニア、また亜硝酸塩のピークがあるらしい。よほどライブロックの状態がよかったのだろう。
ベルリン方式は現実だ。自然はすごい。
最後に
リー・チン・エン氏は天国で笑いこけているに違いない。皆が30年間、ウエット/ドライ、オゾナイザー、紫外線殺菌灯、反硝化槽、ベアボトムなどの工夫、テクノロジーをこらした。今回の、ベルリン方式のReef(無脊椎動物水槽よりもあえてReefと呼びたい)を実践して感じたことは、自然の偉大さ、また、その美しさである。いままでの海水魚水槽にはなかった、微細生物の自然な世界がある。
それを居間に持ち込んで楽しむことだけでなく、このような水槽を通じて自然の美しさをより多くの人が認識し、その理解、保護に力を尽くす人が増えていくことを祈る。
その反面、ライブロック、サンゴの採集は、その守ろうとする自然を破壊してしまう可能性もある。現にアメリカのフロリダ州、ハワイ州ではライブロック採取の規制がある。しかし乱獲されなければ、ホビィストが使用する量は些細なものであるし、このベルリン方式を通じて、ハードコーラルの養殖も進みつつある。ドイツではホビィストが育てたサンゴが流通していると聞くし、アメリカでも養殖されたミドリイシ片などが出回り始めた。
このように、ホビィスト自給自足のReefももうすぐそこである。
ベルリン方式設備概要
水槽
500L (1m×1m×50cm) オーバーフロー加工、ガラス製ステンレス枠(朝日マリンファミリー社製)
サンプ (Sump) 110L (80cm×45cm×30cm)。底面を逆富士型に加工。ドライサンプ付。
プロテインスキマー
メイン: Klaes EA 45 360 1.3m高、20cm直径、"Disperserator"方式。高速回転中のスパイク付ポンプブレードで水と空気を攪拌させ泡立てする。コンタクトタイム=3分(1,200L/h循環時)
サブ: Tunze3130直立型。メインタンク内に設置。
水処理
SpectraPure CSP-D150。公称日産50ガロン(約170L)、40psi、水温10℃で日産100L程度。セディメント、カーボンブロックプレフィルター。TFC逆浸透膜、イオン交換、自動注水バルブ経由カルシウム反応槽へ。純水の伝導性0.5μS(マイクロジーメンス)以下。
その他の設備
人工海水:千寿薬品、マリアートバリアリーフ(BR)
ライブロック:A-Net通販
カルシウム反応槽(自作):密閉式、容量5L、水酸化カルシウムを飽和状態に保つためShibataマグネティクスターラー使用
水酸化カルシウムCa(OH)₂:関東化学(独Merck社製)※取り扱いには十分注意し、子供の手の届かない所に保管すること
ストロンチウム、微量元素、ヨウ素:Coralife
循環ポンプ:レイシーRMD200N
水流ポンプ:エーハイム1250×2、エーハイム1048、エーハイム1005。他にRocon Surge Master(ランダムに水中ポンプをON/OFFするコントローラー)
水温調節:タカラ海水クーラーTK-125。サンプに300W、メイン水槽に150Wヒーター
照明:Aqualine Buschke 10,000K 150W HQL Osram 70W HQ-NDL、松下電工HQIスポットライト、自然光(東向き窓)
底砂:珊瑚砂パウダー50kg(ひかるアクアリューム)
センサー類(常時計測):PinPointデジタルペーハー(pH)計、PinPointデジタル酸化還元電位(ORP)計、Nisso ND20デジタル水温計、Rocon Level Master水面計(注水緊急停止用)
水質検査試薬:アンモニア(テトラ)、亜硝酸塩(テトラ)、硝酸塩(テトラ、Aquarium Systems)、カルシウム(Aquarium Systems)
情報源
私は一年前、「魚?なんでそんなものが面白いの」と言っていた初心者である。なにせ昨夏、2歳の娘が縁日でもらってきた金魚に死なれたことから魚にはまってしまったのだから。でもこの初心者が、最新の情報を入手し、最先端ナチュラルシステムを実践できたのは、Internetという全世界的なコンピューターネットワークのおかげである。
このInternetで情報(勿論英語で)を手に入れ、推奨されている書籍などを大量に入手し熟読した。情報リストと一言感想を列記する。
この頃感じていることだが、このホビーで経験と共に大事なのは情報である。その生物、また飼育方法論をいろいろな観点から理解することが成功への近道のようである。そのためか、オンライン情報(コンピューター通信を通じて)が非常に人気を集めている。いろいろな人の経験、意見、質問、答えなどが非常に短い時間で世界中を駆けめぐるからであろう。
ぜひ原文で、なるべく新しい本を読んでほしい。ただし、アメリカで出版された本であれば、1991年以降の本でないとあまりベルリン方式の記載については期待できないであろう。
オンライン
CompuServe: "fishnet" - インターネットまたはニフティーサーブなどからアクセス可能(telnet使用)、紳士的、Delbeek氏なども読んでいる?Larry Jackson氏のような非常に頼りになる「権威」もいる。
Internet: usenet rec.aquaria - あまり馬鹿なことを書くと罵倒される?
Internet: rec.aquaria "REEFKEEPERS FAQ" - すばらしいサマリー情報
出版物
The Reef Aquarium, J.Charles Delbeek and Julian Sprung 1994, Ricordea Publishing - この本は必読。バイブルといってもいい。ベルリン方式の無脊椎動物水槽管理の情報がいっぱい。現在英語で出版されている最高のベルリン方式解説本。
The Marine Aquarium Reference, Martin A.Moe.Jr. 1993, Green Turtle Publications - 全般的な情報がよく書かれている。新版でベルリン方式の章が追加された。
The Marine Aquarium Handbook, Martin A.Moe.Jr. 1992, Green Turtle Publications - 非常によい入門書。タンク製作、病気、繁殖などにも詳しい。ただしナチュラルシステムについての記載は少し。
Successful Saltwater Aquariums, John H. Tullock 1994 Coralife Publication - こじんまりと上手くまとめられた入門書。写真、図表などは一切ないが、ライブロック、生物などの記述がきちんとしている。
Dynamic Aquaria, Walter H. Adey 1991 Academic Press - スミソニアン博物館のアデー博士が書いたAlgae Scrubber Systemの解説。しかしそれだけに止まらず、海洋生物学(環境学)の詳しい説明がある。読み物として非常に楽しめる。
Marine Fishes and Invertebrates, Cliff. W. Emmens 1988 T.F.H. Publications - 病気、リー・チン・エン氏のナチュラルシステムについての記載あり。ちょっと古い感じ。ベルリン方式については記載なし。
Captive Seawater Fishes, Stephen Spotte 1992, John Wiley & Sons - 非常に科学的、しかし、水量何トンという水族館レベルの本かもしれない。ナチュラルシステムについての記載はない。
図鑑
「サンゴ礁の生きもの」 奥谷喬司・編著 山渓フィールドブックス9、山と渓谷社 - 沖縄産のライブロックに付着してくる生物がたくさん写真付きて載っている。とても参考になった。
特許
モナコ方式 Jean Jaubertの特許:アメリカ特許番号 4995980
ビデオ
An Introduction to the Hobby of Reef Keeping, Julian Sprung 1991, Two Little Fishes Inc. - ディテールに欠けるが、目で見るインパクトは大きい。
ベルリン方式制作実施経緯
1月
上旬 - プロテインスキマー、逆浸透膜・イオン交換フィルターなど輸入。個人輸入は面倒だがコストパフォーマンスがよい。無脊椎動物はお金がかかる。できることは自分でやらないとやっていけない。素人給排水工事を始める。
中旬 - 水槽正式発注(朝日マリンファミリー/担当:岡さん)
18日 - 水槽納品。逆浸透膜・イオン交換後の純水注入開始1日100L、タラタラと純水貯まっていく。
2月
23日 - 夜、千寿薬品マリンアートBR500L箱投入。配管完了!やっとこれで管工事業は失業だ。エンビパイプの配管には自信があった。プロテインスキマー運転開始。
24日 - pH=8.35、ORP=47mV、水量:現在約450L。クーラー取り付け、水温調節開始。Antiphos燐酸吸着剤(酸化アルミ?)(AB社製)サンプに投入。水が少々濁っている。
25日 - day0 pH=8.28 ORP=55mV、Temp=24℃、1:12AM、A-NETからライブロック出荷(石垣島)。7PM、段ボール五箱のライブロック羽田の貨物ターミナルに到着(93kg)。羽田空港には貨物ターミナルへの道路標識(案内)がない。迷ってしまった。なんと日航はこの荷物のためにコンテナ1個を専用に使ったようだ。8PM ライブロックを水槽に投入、ナマコ一匹発見。ライブロックの状態は非常によい。同封の海水がサラサラ(ベトベトでなしに)している。臭いも軽い磯の香り。9PM、手伝ってくれた友人に寿司をご馳走する(高くついた...)。11PM濁っていた海水が透明になる!12PM活性炭(AB社製400g)をストッキングに入れてサンプに投入。
26日 - day1、11AM pH=8.24、ORP=73mV、Temp=24.1℃、アンモニア0、亜硝酸塩0。カエルウオ×1、アカハチハゼ×1、サンゴハゼ×2、シッタカ×10、Kalkwasser×1.5L、直後はpH=8.47。9PM pH=8.18、ORP=89mV、Temp=24.1℃。
27日 - day2 7AM pH=8.30、ORP=95mV、Temp=24.2℃、アンモニア0、亜硝酸塩0、硝酸塩(テトラ)0。5PM pH=8.26、ORP=104mV、Temp=24.0℃。水温調節をする。
28日 - day3 7AM pH=8.33 ORP=114mV、Temp=24.5℃、アンモニア0、亜硝酸塩0。9PM pH=8.26 ORP=128mV、Temp=24.5℃
3月
1日 - day4 8AM pH=8.32 ORP=137mV、Temp=24.4℃。雪降っている、昨日は暖房を消して寝た。アンモニア0、亜硝酸塩0。
2日 - day5、7AM pH=8.34 ORP=174mV、Temp=24.5℃。カエルウオが夜中に飛出して干物になった。12AM pH=8.30 ORP=196mV、Temp=24.6℃、アンモニア0、亜硝酸塩0。3PM Kalkwasser×2L
3日 - day6 8AM pH=8.39、ORP=249、カルシウム反応槽完成。Kalkwasser自動注入開始。
4日 - day7、1AM pH=8.49、ORP=260、Temp=24.5℃。5PM surge maker使用開始、インターバル29秒。水流用エーハイム1250。異常増水時にカルシウム反応槽注水を停止するようセンサー設置。ストロンチウム、微量元素追加。pH=8.44、ORP=264、Temp=24.5℃。
5日 - day8 6AM pH=8.38 ORP=275、Temp=24.5℃、アンモニア0、亜硝酸塩0。オーバーフロー採水口加工、表面水がもっと落ちるように。水の中の微粒子が増えたような。砂は非常に自然な感じになってきた。
6日 - day9 9PM pH=8.35 ORP=292、Temp=24.2℃。
7日 - day10 8AM pH=8.40 ORP=300、Temp=24.4℃。
8日 - day11、アメリカ出張。7AM pH=8.42、ORP=313、Temp=24.4℃。Iodine、Strontium、Trace Elements追加。Kalkwasserのマグネティクスターラーにタイマーを追加。アンモニア0、亜硝酸塩0、硝酸塩0。
9日 - day12 留守。夜、pH=8.45、ORP=333、Temp=24.5℃。
10日 - day13 留守。夜、pH=8.32、ORP=356、Temp=24.4℃。
11日 - day14 留守。夜、pH=8.38、ORP=366、Temp=24.5℃。
12日 - day15、留守。夜、pH=8.32、ORP=387、Temp=24.4℃。
13日 - day16 留守。夜、pH=8.37、ORP=396、Temp=24.5℃。
14日 - day17、留守。夜、pH=8.39、ORP=403、Temp=24.5℃。
15日 - day18 留守。夜、pH=8.38、ORP=403、Temp=24.4℃。
16日 - day19 帰宅。プロテインスキマー内に茶色の藻が。水は少し黄色っぽい。10PM pH=8.29、ORP=419、Temp=24.4℃、亜硝酸塩(テトラ)0、Nitrate Nitrogen < 0.2ppm(by SeaTest Low-range Nitrate Test)、硝酸塩 < 0.9ppm。カルシウム、17×15=405mg/L。
17日 - day20 ディスクコーラル、イエローポリープ、アンティアス3尾追加。
18日 - day21、8AM pH=8.50、ORP=410、Temp=24.5℃。
19日 - day22、Euphyllia sp追加。
20日 - day23 アンティアスが岩の陰から出てくる。センナリヅタ、スズカケヅタなど出現。この頃はこれらCaulerpaはあまり評判がよくない。溶けた時の水質問題があるからだろう。CompuServe/fishnetのLarry Jacksonさんに説得され引っこ抜く。Iodine、Strontium、Trace Elements追加。
21日 - day24、8AM pH=8.40、ORP=422、Temp=24.5℃。魚大丈夫。
22日 - day25 休み。
23日 - day26、水温を上げる。10PM pH=8.40、ORP=427、Temp=25.4℃。
24日 - day27、Euphyllia ancora入荷。
25日 - day28 10,000ケルビンHQI 150Wライト追加。CompuServe Fishnetで話題になっていた10,000ケルビンの150W両口HQIである。色温度が高いためActinic Blueの蛍光灯が必要ない。結果的にすっきり収まり、またコスト面でもHQI+蛍光より安い。色は最高、窓からの太陽光とほとんど同じ色だ。比べると、他のHQIまた低ボルトハロゲンなどの色の悪さがわかる。水槽の上面からの景色があまりにもよいのでスポットライトで天井から照明するようにした。最初から蓋はしていない。換気をしているので湿度など問題はないようだ。HQI 70W+150Wでは足りない?真昼の日はもう少し明るいほうがいいように思う。
26日 - day29 水流用エーハイム1048追加。これで合計で4台のポンプがランダムに水流を起こしている。6PM pH=8.45、ORP=427、Temp=25.4℃
27日 - day30、9PM pH=8.40、ORP=428、Temp=25.3、亜硝酸塩0(テトラ)、Nitrate Nitrogen < 0.2ppm(by SeaTest Low-range Nitrate Test)、硝酸塩 < 0.9ppm。Calcium 17×15=405mg/L。
28日 - day31 成功か?
29日 - day32、別水槽で1カ月以上海離してあったパウダーブルータン追加。
30日 - day33 土曜日 12AM pH=8.40、ORP=430、Temp=25.3℃。
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